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BGMで防音・遮音しても上手くいかない理由

更新日:5月8日

はじめに


神山聴景事務所です。

私の会社は聴景「聴こえる景色」をデザインしています。

これは対象となる空間で発生する反響、物音、騒音などを考えながら、その場に調和する音楽とその音楽と環境音とが調和する心地良い環境設計をすることを目標とし今まで数々の施設の聴景デザインをしてきました。

つまりこれが昨今話題になっているウェルビーングに繋がると考えています。

その中で私が注目しているのがオフィスの聴景です。

オフィスではコロナ禍になってからWEB会議が主流になってきたことでどこでも会議ができるようになりました。

その結果、新たな騒音問題に発展していったのです。

このような状況になる前から騒音問題を改善するためのサービスは存在していました。

しかし問題が改善されるケース一方、改善に至らないケースが多数報告されています。


そこには音響的な問題以前に「音」の根本的なことがその原因になっていることがわかりました。

その問題となっている内容を深掘りしながら、聴景デザインが可能とする改善方法をご紹介いたします。



問題の詳細


馴染みのない自然音編

Part 1

「インテリアと関係のない音だから違和感を抱く」



オフィスで使われる自然音を上げるとすると、鳥のさえずりがありその次に川のせせらぎが良く使われているのではないでしょうか?

これ、観葉植物のあるオフィスならまだ百歩譲っていいでしょう。

しかし全く関連性のないオフィスだとその音源は違和感のある環境を生み出してしまいます。

これではせっかく癒し目的で入れた音源が何の効果も発揮されないむしろ騒音として邪魔者扱いされること間違いなしです。

Part2

「音源が過度に編集されているから自然音が不自然な音に聴こえる」

これについては一般人にはちょっとわかりづらい問題だと思いますが、話を聞けば納得できるのではないでしょうか?

音源の編集というのは、ミックス・マスタリング作業のことを指します。

これらの作業内容を簡単に説明すると、まずミックスは「録音された各トラック(音)の音量バランスや音色などを調整する作業」

次にマスタリングは「作った曲を聞きやすいように最終調整する作業」を意味しています。

自然音ですのでいろんな音を重ねていることはまずないので、ここで指している編集はマスタリングのほうでしょう。

そう、オフィスに流す自然音でもこの作業が行われているんですが、私個人としては音がとても平面的に聞こえてきます。

つまりどういうことかというと、こうした自然音で例えば鳥の囀りだとよりその鳴き声を聞かせるためにその曲中の囀りの音量を同等のレベルに揃えたりしています。

さえずりを自ら「聴く」のであればその編集は何も問題ないでしょうが、積極的に聞かないいわば空間に溶け込むBGMとして使われるものであれば、その編集は間違っていると言えます。

多少の編集は私もよくしますからそれはいいと思いますが、自然音の中に含まれるあらゆる音を排除してかつ聞かせたい音のレベルを上げるのはいかがなものでしょうか?

それって自然と言えますか?

さらに囀りが鳴る間隔。確かに原生林や、早朝の森林やその奥深くへ行けばひっきりなしに鳥が鳴いている光景を目にすることができるでしょう。

ですがその環境は私たちにとって本当に癒しになるのでしょうか?

あまり耳馴染みのない環境だとは思いませんか?

その上、鳥の鳴き声は基本的に高音域に集中しているので、耳につきやすい傾向にあります。

ですからずーっと聴けるかというとそうでもなく、むしろ鬱陶しいと感じてくる時があるのです。



デザイン方法 


「耳馴染みのある音を使用」

例えば対象空間の周辺環境が道路の場合、交通騒音に似た音あるいは当社が用意した交通騒音をその空間に流すことで、環境変化の違和感がなくなり自ずと対象の騒音が気にならなくなる、といった仕組みで音をマスキングします。

音というのは一種の魔法を私たちに与えてくれます。それは聴覚的な錯覚です。




自然音が一番身近な体験だと思いますが、その音を使うことで森林環境を疑似体験することができるのです。

音が耳を通してリラックス効果を生み出したり、時にはテンションを上げてくれるのです。