ウェルビーイングの定義
ウェルビーイングという言葉が徐々に一般化してきましたが、これは業界に限ってのことで、まだ世間一般には浸透していないように思えます。
中にはWell認証と呼ばれる、空気・水・光・音などさまざまな項目において、施設内の快適性を保持できているかどうかを審査し、条件をクリアすれば快適性の高い空間として認証されるといった機関も設立されており、施設を作る側にとってますます重要なキーワードとなってきています。
ウェルビーイングとは
心身ともに満たされた状態を表す概念を指しています。あらゆる環境においてWELL (良好な)- BEING(状態)が大事であることが近年の空間作りなどで課題になっていますが、これをさらに客観的WELL - BEINGと主観的WELL - BEINGに分けることも可能です。
客観を空間や環境、主観をその空間にいる人の生活習慣と考えると、この両方が機能して初めてWEII - BEINGが満たせると考えられます。
主観的WELL - BEINGでは様々な要因が絡んでおり、解決の糸口を見つけ出すのは客観的WELL - BEINGよりも難しいはずです。
しかしその解決策の1つにウェルビーイングな空間作りがあることで、少しで個々の悩みやストレスの解消に寄与するかもしれません。
そこで今回はウェルビーイングなオフィス「音空間」について考えたいと思います。
オフィスの聴景
話し声
みなさんがオフィスにいる時に聞こえる音といえば何を思い浮かべるでしょうか?
それは「気になる音」、「気にならない音」に分類できます。まず一番気になると言われているのが「話し声」です。
話し声は会話音の他に、WEB会議の音声も音空間を構成する1つの要素にもなりました。
オープンスペースでWEB会議ができるようになると、その会話音が外部に漏れないようにする必要があります。
このような空間で会議をすることのリスクに対しては、一人用のテレブースを設けるなど、さまざまな対策がなされています。
機械音
小規模のオフィスだと、会話音の他に複合機の音などが挙げられます。
小さい空間ほど、ちょっとした物音が気になり、さらに防音性が低いと
基本的にオフィスでは黙々と作業をこなす場とコミュニケーションを活性化させる場と分かれていますが、小さなオフィスだとこれらの機能が1つになっているので、業種によっては物音が目立つ環境になっているかもしれません。
BGM(音楽)
マスキングや空間の雰囲気を作るために使用されています。
音楽に限らずラジオ・自然音、ノイズなどを使った例もあります。
従業員全員にBGMが機能するかはそれぞれの感性や状態に委ねられるため、ある特定の音楽が流れていることを嫌う人たちもいるのが現状です。
こうした場合は、バックグラウンドになるような工夫ができていないことが要因の1つとなっています。
音ひとつで雰囲気が様変わりするので、こちらもオフィスの聴覚情景として重要な要素となります。
これらの音がどちらに作用するのかは主観によって変わりますが、音に配慮した空間構成にするだけでも、その幅の特にマイナス面が大きく軽減されるはずです。
では客観的な視点の音響項目には何があるのか見ていきましょう。
WELL認証 音項目
必須項目 音響マッピング
こちら具体的にどのようなことをするのか記載されていないので文字から読み取るしかありませんがあらゆる音源や残響時間等を記した音空間モデリングのことを指していると考えられます。
このマッピングに加えこれらの項目が加点対象となっています。
1最大騒音レベル
2遮音壁
3残響時間
4吸音性能のある仕上げ
5最低限の暗騒音
6β 衝撃音の管理
7β音響機器の強化
8β聴覚健康保全
Green Building Japanより引用
※緑字は聴景事務所のサービス範囲
数値的に見ると、これらの項目がクリアされることで快適性の高い空間になるとされています。
では赤字項目を取り上げていきます。
最大騒音レベル
騒音レベルは50dB以上の数値が持続すると、騒音と呼ばれるような騒がしい環境になると言われています。
ただしオープンスペースと会議室では用途や空間規模が変わるので、この基準値は空間ごとに変える必要がありそうです。
会議が盛り上がる場合や、個性による一時的な音声音量の増大も考えられますが、それを吸音はできてもレベルを抑えることは困難なので、こうした突発音や暗騒音が反響しないような空間作りをして最大騒音レベルを抑えることが求められます。
残響時間
残響時間はあまり耳慣れない言葉かと思いますが、これは空間で発生した音が減衰するまでの時間を数値で表すための項目になり、音環境を考慮されている企業だとこの調査は一般的なものとなっています。
理想的な残響時間は0.8 sec(セカンド)とされており、これを下回ると理想的な音環境、上回ると音が残り反響しやすいなど、音環境の状況を把握することができます。
音が反響しやすい空間は、体験したことがある人ならわかると思いますが、音が発生するたびに反響と共に騒音レベルが増大していくといった負のループに陥り、著しく快適性を損なわせる原因になりうるので、設計段階での対策が必要です。
吸音性のある仕上げ
残響時間と関係がある項目で、吸音率が高いほど残響時間の値は小さくなり快適性へと繋がります。
壁・床・天井の材質によって空間の音の吸音率は上がるため、最後の仕上げとして吸音パネルを利用することが多いでしょう。
吸音率の最大率は1.0なので、吸音パネルやインテリアなども活用しながら音が吸音される素材を配置していきます。
吸音パネルは後からでも設置可能ですが、パネルを貼ったからといって解決しないケースもあるので、こちらも設計段階で考慮しておく必要がありそうです。
最低限の暗騒音
暗騒音は日本語でバックグラウンドノイズと言われています。
実は暗騒音は重要な項目で、暗騒音が大きすぎると騒音になってしまいますが、程よいレベルの暗騒音は空間に快適性をもたらします。
睡眠時にノイズ音を利用する人は、夜の静かすぎる環境がかえって不安になったり、ちょっとした物音に敏感になったりといった理由に挙げられます。
無音に近いオフィスをイメージしてみてください。
音が出しにくく話すにも気を遣ってしまい、窮屈な環境になるかもしれませんので少なからず音は必要なのです。
音響機器の強化
これは何を基準に強化していくのか難しいところではありますが、BGM用音響とサウンドマスキング用音響の2つにおいて強化の可能性があります。
音響機器によって音域の幅が異なりますので、臨場感のある雰囲気を出したいのであれば性能の高い製品を使うべきでしょう。
特に自然音を使う場合は音域が狭い機器を使って再生すると、雑音に聞こえてしまうことがありますので注意が必要です。
音がストレス要因になりにくいオフィス音空間の設計とは
まず設計段階で音環境の調査が必要になります。
残響時間・遮音性能(これは設計会社でもある程度されている)・騒音レベル・音響マッピングを行い想定される音環境を検出します。
その後必要に応じて音響対策を練っていくことが大事です。
これらをすることで快適な音環境実現に大幅に近づくことができます。
また、音響の設計レベルに応じて実現できる内容が変わってきます。
詳しくはこちらをご覧ください。
音響設計レベルで考える空間体験の創出方法
オフィスでは少なからず音問題があります。些細なことでも放置してしまうと大きな問題になったり気付かぬうちにストレス要因になっていることがあるため、設計段階あるいは既に稼働しているオフィスで音問題を改善していきたい思いがありましたら一度ご相談してみると良いでしょう。
株式会社神山聴景事務所
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